第2次トランプ政権が打ち出すと予想される政策には、減税、規制緩和、公的部門のさらなるデジタル化の推進などが含まれています。それらが実施されれば、成長の促進や企業のリスク対応支援に加えて、連邦債務に対する懸念の軽減にまでつながる可能性があります。しかし、トランプ氏は経済に大きな打撃を与える恐れのある関税引き上げや不法移民の強制送還などの政策も導入すると明言しています。
abrdn(アバディーン)のエコノミストは、米国のインフレは連邦準備制度(FRB)の目標を上回る水準にとどまる、成長は今後数年続くものの、その後は減速に転じると考えています。また、FRBの利下げサイクルは2025年後半に終了すると予測しています。トランプ氏の政権復帰がすべての資産クラスと投資戦略に影響を及ぼすのは必至です。abrdnの運用担当者は、ハウスビューが予測する経済の今後の動向に沿って、投資機会を積極的に探っています。
ユーロ圏は政治と経済の両面で課題に直面しています。ドイツでは連立政権が崩壊し、2025年2月23日に連邦議会下院総選挙が実施されることになりました。フランスでは内閣総辞職で財政再建の先行きの混迷が深まっています。ドイツの自動車産業は米国の関税引き上げなどの貿易制限に特に脆弱です。対照的に、ユーロ圏周縁国は力強い成長を続けています。
欧州中央銀行(ECB)は経済を下支えするために、米国以上の金融緩和を実施する必要に迫られています。長期的には、マリオ・ドラギECB前総裁が2024年9月に発表した報告書(ドラギ・レポート)に沿った欧州の競争力と生産性の改善に向けた構造改革が不可欠です。
トランプ氏の政権復帰は地域紛争にも影響を及ぼします。ウクライナとロシアが2025年に停戦に合意する可能性が高まっています。中東では、イランに対する追加制裁または軍事行動の可否が焦点として浮上する見通しです。シリアのアサド政権崩壊は中東の緊張感が高い状況が続くことを明確に示しています。現在までのところ、石油価格への影響は穏やかですが、今後は変わる可能性があります。
地球温暖化対策の世界的枠組み「パリ協定」からの米国の再離脱など、第2次トランプ政権発足の影響がサステナブル投資にも及ぶと考えられます。abrdnのサステナビリティ・チームは、米国のグリーン投資を支えてきた「インフレ削減法(IRA)」の大部分には変更がないと予想しています。abrdnでは、サステナビリティが欧州の投資家にとって引き続き主要な関心事項であると考えています。
最後に、中国と多くの新興国への影響が予想される第2次トランプ政権の貿易政策を見てみましょう。トランプ氏は中国からの輸入品に対する関税を40%に引き上げることを明らかにしています。一方、中国は、新たな経済対策を打ち出すとともに、人民元安を容認すると見られています。さらに、重要な鉱物資源の輸出および、または米国企業向け輸出の制限という対抗措置に踏み切ることが予想されます。グローバル・サプライチェーンの中国離れと米国の中国依存の低下はインド、メキシコ、韓国、台湾などに恩恵をもたらします。アジアとその他の地域の新興諸国にとっては、同盟関係や友好関係にある国に限定したサプライチェーンを意味するフレンド・ショアリングの構築は重要な課題となっています。
abrdnのハウスビューでは、米国株についてはポジティブな見方を維持していますが、2025年のアセット・アロケーションでは、米国株式市場をけん引するマグニフィセント・セブンと呼ばれる主要テクノロジー企業7社以外にも目を向けるべきだと考えています。分散とリスク調整後リターンの観点から見ると2025年は、プライベート市場、短期債、ヘッジファンド戦略が魅力的な代替投資対象として考えられます。そうした傾向は、お客様からの投資アイデア提案のリクエストにも明確に見受けられており、世界各地域のアセット・オーナーとの会話における主要トピックになっています。
2025年のInvestment Outlookシリーズでは、上記の問題の多くについてabrdnの詳細な見解をご覧になれます。さまざまな資産クラスの主要動向や洞察は、お客様が2025年の投資戦略を決めるうえでお役に立つと確信しています。ぜひ、ご覧ください。
Investment Outlookシリーズ
abrdnのハウスビュー
2025年の主要テーマ:注目すべきマクロ・トレンド
株式:4セクターのサステナビリティへのトランプ効果の影響分析
債券:不確実性に柔軟対応
新興国市場:「新トランプ時代」がもたらす逆風をどう切り抜けるか
インフラストラクチャー:生活の質の向上を支えるインフラ投資
Digital Assets: Trump comeback to usher in new era of financial innovation (英語のみ)