abrdn(アバディーン)のハウスビューは、株式リスクと米ドルに対しては強気、不動産はより楽観的である一方、大半の債券市場に関しては中立です。

以下の5つの主要なマクロ・テーマが2025年を大きく左右するとみられます。

  • トランプ次期大統領の下での政策変更によって、少なくとも米国と一部の新興国で利下げサイクルが短縮される。
  • 政府債務に再び注目が集まり、債券のターム・プレミアムはさらに上昇する可能性が高い。
  • グローバル化のパターンの変化によって、新興国の中で勝ち組と負け組が生まれる。
  • ウクライナや中東での停戦は、実現したとしても不安定なものになる。
  • 欧州が政治リスクの中心となる。

ハウスビューは、abrdnのファンド・マネジャーやお客様がこうした不確実性を乗り切る手助けをするためのものであり、各資産クラスの運用チームとリサーチ・チームの投資に関する専門知識を結集し、向こう1年から1年半の主要市場についてハイ・レベルのシグナルを示します。abrdnの運用者はハウスビューから逸脱する裁量を与えられていますが、継続的な改善のために、こうした逸脱の根拠を示し、反対意見をフィードバックすることが求められます。

abrdnのハウスビュー

※本資料に含まれる見解・概要等は、一般的な情報提供のみを目的としており、特定の運用に係る投資助言や推奨として依拠していただくものではありません。

出所:abrdn、2024年12月

先進国株式を取り入れる

先進国株式に対してはより強気になっています。米国の企業利益の成長見通しは良好であり、テクノロジーと人工知能(AI)の進化が株式市場のパフォーマンスに強固な基盤をもたらしています。ただし、バリュエーションは割高なため、テクノロジー株へのエクスポージャーの中で、半導体設備投資関連銘柄から他のハードウェア・セクターやソフトウェア・セクターにシフトすることが望ましいと考えています。

米国の政策変更に注目

目先の米国の政策変更は、米国企業に大きな恩恵をもたらすでしょう。企業の合併・買収(M&A)規制の緩和、銀行の自己資本規制の緩和、鉱業権の付与拡大といったトランプ次期大統領の規制緩和政策は支援材料になる見込みです。法人税減税に関しては、税率が21%から一部のケースで15%まで引き下げられる可能性があり、これは中小企業に特に大きな恩恵を与えるとみられますが、貿易関税は米国外で事業を展開している企業に悪影響を及ぼす恐れがあります。

バリュエーション懸念と政治リスク

一方で、米国株のバリュエーションは割高で、米国株と欧州株のバリュエーション格差が過去最大になっているため、大きなダウンサイド・リスクがあります。また、移民制度改革によって米国の労働市場が混乱する可能性や、インフレ率の上昇により予想よりも金融政策が緩和されないリスクが警戒されます。

クレジット市場戦略

良好なリスク・センチメントと名目経済成長率の上昇を主な理由に、投資適格社債に対しては引き続き楽観的です。魅力的な利回り水準や、景気上昇シナリオと景気下降シナリオのいずれでも良好なリターンを上げる可能性があることが、こうした確信を支えています。逆に、ハイイールド債に対しては中立スタンスを維持しています。トランプ次期大統領の政策の一部はこの資産クラスを支えるとも考えられますが、割高なバリュエーションや借り換えリスクには注意すべきです。

先進国国債

FRBの利下げサイクルが終わりに近づく中、先進国国債に関しては中立のスタンスを取っています。ただ、2025年の欧州には政治的な火種があるとはいえ、ECBによる金融緩和が継続する見通しであるため、ユーロ圏市場は他の市場のデュレーション・リスクより魅力的だと考えます。

米ドルと世界貿易を巡る不確実性

米国と米国以外の国・地域の成長率や金融政策の乖離が米ドルを支えると予想されることから、ドルに対する強気スタンスを維持しています。トランプ次期政権の閣僚の一部は反ドル高の姿勢を示していますが、ドル安誘導のための国際的な合意の実現は困難と思われます。

新興国の債券と株式

世界貿易を巡る不確実性とドル高は、新興国の現地通貨建て債券に対する逆風になるとみられます。そのため、この資産クラスの投資判断を中立に引き下げています。もっとも、グローバル化の流れが変化する中、新興国で勝ち組と負け組が生まれ、中南米諸国など利回りの高い国で投資機会が生まれると予想されます。

新興国株式に対してはやや強気のスタンスを維持しています。2025年に向けて中国の成長に回復の兆しが見られているほか、中国がさらなる政策緩和を発表する公算が大きいと考えられるためです。この資産クラスの割安なバリュエーションは魅力的であり、中国が現在の市場予想を上回る政策緩和を実施した場合には特にそう言えます。

グローバル不動産直接投資

グローバル不動産直接投資に対するシグナルをさらに上方修正しています。この市場はサイクルの底から上向きつつあり、買いの好機が到来していると見ています。債券に対するイールド・プレミアムは特に欧州において魅力的であり、投資家のセンチメントと市場の流動性も改善しています。