過去10年の大半を通じて市場は金利低下と低インフレというレジームにあり、このような環境下では伝統的な60/40ポートフォリオが選好されてきました。このアプローチは通常、成長を株式に、市場のストレス局面での分散化を債券(すなわち、株式と債券の負の相関)に求めます。しかし、状況は2022年に変化しました。各国・地域の中央銀行が高インフレに対抗するため金利を急激に引き上げた結果、株式市場のボラティリティを相殺するのには債券が役立つという一般的な期待に反し、成長鈍化への懸念から株式と債券が揃って下落しました。

少数の米テクノロジー企業や堅調な経済成長などを原動力に、株式市場は当初のインフレおよび金利のストレス局面を脱しました。しかし、債券は引き続き厳しい市場環境に直面しています。利下げ予想はさらに先送りされており、インフレ率を目標水準まで低下させる「最後の1マイル」は困難なものとなっています。それにもかかわらず、株式の絶対的な力強さが60/40ポートフォリオの目覚ましい復活につながっています。

株式と債券の相関

株式市場は現在、特定の地域、セクター、企業への集中度がはるかに高くなっています。MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスでは、米国が63%を占めています。セクター別に見ると、情報技術(IT)セクターが23%と最大であり、2,800社以上で構成されるインデックスの14%を5社だけで占めています。一方、長期的なバリュエーションは特に魅力的というわけではなく、S&P500種株価指数は予想収益の22倍で取引されており、これは長期平均を大きく上回っています。業績が期待外れに終わった場合に耐えられる余地はほとんどありません。

逆に、債券利回りは過去10年と比べてかなり魅力的で、利下げサイクルの恩恵を受ける可能性があるため、分散化におけるより優れた出発点となっています。しかし、インフレ率が目標水準まで低下して利下げが可能にならない限り、投資家は利回りの低下が株式市場の下落を相殺するという期待を抑える必要があるかもしれません。

当然ながら、投資家は底堅いポートフォリオを構築するより良い方法を探求しており、成長とインカムの源泉を分散化することをますます求めるようになっています。具体的には、魅力的な長期リターンを生み出すと同時に、市場や経済のストレス局面でも底堅さを発揮するようなポートフォリオを望んでいます。abrdn(アバディーン)は、様々な資産に分散投資するマルチアセット・ソリューションが、より分散化された柔軟なポートフォリオの構築に役立つと考えています。

資産の分散

abrdnは伝統的資産クラスとオルタナティブ資産クラスに制約のない柔軟な方法で投資し、それにより、力強いリターンの可能性、安定した長期インカム、様々な経済シナリオにおける底堅さを提供するよう努めています。

求めているのは、異なるリスクとリターン要因を持つファンダメンタル的に魅力的な長期投資先であり、これには伝統的資産クラスとオルタナティブ資産クラスが含まれます。こうしたアプローチは、短期的にボラティリティを低下させるほか、インカムとリターンの獲得において単一の資産クラスへの依存を減らすのに役立ちます。これは足元の市場環境では特に重要な要素でしょう。市場で毎日取引される流動性の高いオルタナティブ資産への投資機会は、過去10年の間に大幅に拡大しています。これらの資産は、ポートフォリオに分散効果をもたらす可能性があります(図表を参照)。

株式や債券への依存を減らせる豊富な投資機会

さらに、abrdnのポートフォリオは長期的なポジションをとっていますが、個々の資産クラスの見通しはリスクとリターンの変化に伴い変動します。アセット・アロケーション(資産配分)ではアクティブ・アプローチを採用し、最も魅力的なリスク調整後リターンを見極めようとします。また、伝統的資産クラスとオルタナティブ資産クラスに関する社内の専門知識も活用するため、ポートフォリオは幅広い知見と経験の恩恵を享受することができます。

今後の見通し

abrdnの長期期待リターンの枠組みに基づくと、現在、上場株式の妙味は薄いと考えます。これは主に出発点のバリュエーションの高さを反映しており、複数の長期バリュエーション指標では米国株式が特に割高に見えます。また、人工知能(AI)が生産性向上にもたらすメリットなど、いくつかの要素については楽観的になる理由があるかもしれませんが、株式には複数の下振れリスクがあることも確かです。

過去10年の大半を通じて、債券の長期的価値はほとんどないに等しく、これは期待リターンの低さを反映しています。しかし、金利は急上昇しており、債券利回りは今や魅力を増しています。いずれ、中央銀行は金利を中立水準に向けて引き下げると予想しており、それが債券リターンを支えるでしょう。しかし、ここ数ヵ月見てきたように、その道のりは必ずしも平坦ではありません。また、クレジットに関しては、トータルインカムは魅力的とも言えますが、信用スプレッドは良好なデフォルト環境を織り込んでおり、悪材料を消化できる余地は限られています。

abrdnでは、伝統的な資産クラスには選別的な投資機会があるとみているものの、インカムと成長を生み出すために伝統的な資産クラスだけに頼ることには依然として慎重です。

代わりに、はるかに広範な資産クラスでいくつかの長期的な投資機会があると考えており、様々な市場環境において魅力的なリスク・リターン特性を持つ以下のような資産に注目しています。

  • インフラ資産:キャピタルゲインの可能性があり、多くの場合インフレに連動する長期的に安定したキャッシュフローの恩恵を受けると考えます。現在のバリュエーションは長期的に見て魅力的と思われ、力強いリスク調整後リターンを生み出す可能性を秘めています。
  • 現地通貨建て新興国債券:魅力的なリターンと分散効果が期待できます。
  • 変動利付資産担保証券:同様の格付けの社債と比べて、信用スプレッドが大幅に高い水準にあります。また、長期的にはデフォルトに対する構造的なプロテクションも提供してくれるでしょう。
  • 様々なスペシャル・オポチュニティ、すなわち、しばしば特異なリターン要因を持つ資産:例として、ヘルスケア・ロイヤリティや貴金属ロイヤリティを裏付けとする債務が挙げられます。また、経済成長やインフレではなく、訴訟の本案に基づいて投資パフォーマンスが決定される訴訟ファイナンスなどもあります。

本稿に記載されている情報は、一般的な情報提供のみを目的としており、専門的な金融アドバイスを構成するものではありません。投資に関する最終的なご判断は投資家ご自身で下されますようお願いします。